狭き門をくぐり抜け宇宙飛行士になった方々は、どのような子供時代を送っていたのか。また、どのようなお母さんに育てられたのか。興味がある方も多いのではないでしょうか。
本日は、そんなあなたにおすすめの1冊の本をご紹介します。
この本に登場するのは、向井千秋さん、若田光一さん、山崎直子さん、古川聡さんのお母さんです。
教育ジャーナリスト杉山由美子さん(著者)がそれぞれのお母さんにインタビューした内容をもとにまとめられた本です。
松本零士さんが語る
最初に登場するのは…、『銀河鉄道999』や『宇宙戦艦ヤマト』の作者である松本零士さんです。
松本零士さんは、2023年2月に都内病院にて亡くなられましたが、2021年6月まで日本宇宙少年団の理事長を務めるなど(現在の理事長は山崎直子さん)、子供達への教育活動も熱心にされてきました。
松本零士さんは、この本に登場する4人の宇宙飛行士の共通点を見いだし、こう語っています。
この人たちは子ども時代、たくさんの触媒を受け取っています。その触媒が未来への道しるべになって、その子の将来を決定づけていると思います。
触媒は多ければ多いほどいい。大人はどんどん与えてあげてほしいですね
子どもはいつ触媒を受け取るかわかりません。だからこそ、大人は、親は、子どもたちにたくさんの触媒を用意してあげなければなりません
この本に登場する若田光一さん、山崎直子さん、古川聡さんも、子供時代に松本零士さんのマンガやアニメを食い入るように見ていたとのこと。
さて、4人の宇宙飛行士たちはどのように育ち、そして、どのようなお母さんに育てられたのでしょうか。
働く母親の子供への強い信頼と愛情(向井千秋さんの母のお話)
弟の足の病気がきっかけで6歳の頃から医者を志した向井千秋さん。高校受験勉強をするために中学3年で上京しました。
お母さんは、千秋さんが「勉強したいから上京したい」と言い出したときには「わかった。やってごらん」大学時代に「短期留学したい」と言い出したときには、「どうぞ、どこでも行ってください」と、送り出しました。
お母さんは、経営するお店が忙しく、千秋さんの成績には無頓着だったと言います。また、休日には子供達(4人きょうだい)だけで実家に預けることも多かったそうです。
しかし、大事な時に大事なところで決断力があるお母さんです。『子供達がやりたいことはやらせてあげたい』千秋さんのお母さんへのインタビューは、そんな、働く母親の、過干渉ではない、子供への強い信頼と愛情を感じます。
子供をひとりの人間として尊重し丁寧に子育て(若田光一さん母のお話)
5歳までが一生の土台を作るとき。わけがわからなくても、どんなこともきちんと道理を話して、いい悪いの判断ができるようにしなければいけない。
光一さんのご両親は、こう話し合って子育てをしてきたそうです。
光一さんのお母さんは、子供のかわいらしいしぐさや言葉など、その都度ノートにメモをとっていました。
本のなかでもいくつかのエピソードをご紹介してくださっていますが、本当に丁寧に丁寧に、子供を子供扱いせずにひとりの人間として尊重して育ててきた様子が窺えます。
親は「どんな道でも応援する」(山崎直子さん母のお話)
お兄さんの影響もあり、幼い頃から宇宙や星が好きだったという山崎直子さん。
『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』もよく見ていたそうです。
そんな直子さんにご両親は、宇宙に関する絵本や図鑑を見つけると買ってあげるなど、子供の関心のあるものはサポートして広げ、伸ばすようにしてきたといいます。
直子さんが宇宙飛行士という仕事があることを知ったのは1986年1月、中学3年生のときのこと。受験勉強をしながら見ていたテレビ画面に映ったのは、スペースシャトル・チャレンジャー号が爆発したシーンだったそうです。
亡くなった7名の宇宙飛行士のなかには、女性宇宙飛行士もいました。
直子さんはこの時、決意したそうです。
亡くなった女性宇宙飛行士の遺志を継いで、わたしは宇宙飛行士になって飛び立とう
その決意は、ご両親にも友人にも誰にも語られることはありませんでしたが、直子さんは、着々とその道を歩み、そして、夢を実現されました。
直子が宇宙飛行士になってがんばっているのは応援していますが、もしふつうの勤め人になっても、専業主婦で子育てしていても、直子が選んだことなら、応援していたと思います
お母さんは、そう言っています。
子供の将来についてあれこれ言う親も多くいますが、「どんな道でも、応援する」そんなご両親の深い愛情を感じながら育ったからこそ、大きな大きな夢を持ち続け、そして、叶えられたのだと思います。
子供と一緒に興味をもち、楽しむ(古川聡さん母のお話)
古川聡さんのお母さんは、女子御三家のひとつとして有名な女子学院出身です。
女子学院出身の方は自由でユニークな方が多いと聞きますが、古川聡さんのお母さんも例外ではないようです。
超常現象に興味をもち毎月専門雑誌を購入していたり、飼っていた小鳥が亡くなったときには子供達の前で解剖をしたというから驚きです。それも、子供達への教育が目的というよりはお母さん自身が好奇心旺盛で、何事も楽しんでいたという印象です。
好きなことにはとことんこだわりたい聡さんの気持ちをお母さんも理解しており、自動車や怪獣など聡さんが興味をもった際には、絵本や図録を買ってあげたといいます。
子どもが興味をもつものには、いっしょに興味をもつ。子どもの目線で見る。わたしが心がけたのはそれくらいです
というより、わたしが子どもたちがやっていることがおもしろくて、いっしょにおもしろがったんです
子供が興味をもったことはどんなものでもとことん追究させる。また、おもしろいものを子供にたくさん見せて、興味を広げる努力を惜しまない。そんなお母さんの姿勢を見習いたいと思いました。
最後に…
ひとりの子供が大人になるまでの間には、様々な人との出会いがあり、そして、影響があると思います。
そのなかでも1番大きな影響力があるのは、やはり1番身近な大人である「親」なのではないでしょうか。
4人の育った環境はそれぞれ異なりますが、子供が興味を持ったことに対しての親の対応は、共通しているように思います。どの親も、子供がやりたいと言ったことに対しては全力でサポートしています。それが、いわゆる「勉強」ではなくてもです。
4人とも、お母さんに「勉強しなさい」と言われたことはないそうです。
言われなくても勉強するし、自分で学んでいく。
そのような子供に育つには、「好奇心」や「夢」が必要です。
そして、それが大きく育つかどうかには、親の考え方や子供への接し方が大きく関わってくるのではないかと思います。
そのヒントが、この本にはたくさん詰まっていますので、興味を持った方は是非読んでみてください!