人格を育てる「全人教育」

おすすめ本

頭だけ良ければよいのでしょうか。
運動だけ出来ればよいのでしょうか。
私はそうは思いません。
調和のとれた「人」を育てたい。
その上で、「個性」を育てたい。
そんな子育てをしたいと思うご両親に是非知ってほしいのが『全人教育』です。

現在「全人教育」を教育方針として掲げている学校は、1,700校ほどあるそうです。それは一体どのような教育なのでしょうか。

「全人教育」という言葉は、後に玉川学園創始者となった小原國芳先生(以下、先生)が大正10年に開かれた「八大教育主張」講演会で初めて使われました。

今回はその「全人教育」について簡単にまとめました。

書籍もいくつかご紹介しますので、良かったら参考にしてみてください。

全人教育とは

先生は、知育偏重の詰め込み教育を批判されました。そして、教育の内容には『人間文化』の全部を盛らなければならないと強く訴えられました。

教育の内容には人間文化の全部を盛らねばなりませぬ。

故に、教育は絶対に「全人教育」でなければなりませぬ。

全人とは完全人格すなわち調和ある人格の意味です。

全人教育論 (著者:小原國芳)

ここでいう『人間文化』には、下記の6つがあります。

  1. 『真』…学問の理想
  2. 『善』…道徳の理想
  3. 『美』…芸術の理想
  4. 『聖』…宗教の理想
  5. 『健』…身体の理想
  6. 『富』…生活の理想

(真、善、美、聖の4価値は『絶対価値』、健、富の価値は『手段価値』)

先生は、これらが調和的に成長するのが理想的だといいました。

1. 学問教育(真)

学問教育(真)では、「与える教育」よりも「つかませる教育」を重視します。

ここでいう「与える教育」とは暗記や詰め込みのこと、「つかませる教育」は発明工夫や創造することを大切にした教育のことです。

詰め込みや棒暗記や試験勉強で、究知心、探求心、ふしぎ、驚きの心の芽を枯らしてはいけませぬ。

全人教育論 (著者:小原國芳)

教育現場では今でこそ非認知能力の重要性が叫ばれていますが、先生はこの時代からそれを訴えられていたのです。

2. 道徳教育(善)

先生は著書「道徳教育論(小原國芳)」のなかで、家庭が人間教育の源泉だと述べられています。両親の教養、思想、道徳、言動が子供に大きな影響を及ぼす、と。

ここで「道徳」ということばが出てきますが、どういったものを指すのでしょうか。

著書「母のための教育学(小原國芳)」では、道徳の本質として下記の3つあげられています。

  1. 個人の自覚
  2. 国際人となり世界的眼光を有すること
  3. 清い鋭い良心

第一に、「個人の自覚」ということを要求いたします。人格価値観念、人間の尊さをわかってもらいたいのです。自己が何であるか、如何なる使命を有するか、その価値、他との関係…

第二には、国際人となり世界的眼光を有することだと思います。国民としての道徳も無論必要です。同時に世界人としての道徳も必要です。広く人類としての任務もあります…

最後に、清い鋭い良心が必要です。…心の奥にいまし給う神や仏のささやきに忠実に耳を傾ける人間でありたいのです。

母のための教育学 (著者:小原國芳)

では、これらはどのように教育するのか。

先生はそこに「宗教教育」や「芸術教育」をあげられています。

また、イソップ物語やアンデルセン物語などのおとぎ話、童話、宗教的な小説、偉人の伝記などもおすすめされています。

3. 芸術教育(美)

先生は「生活そのものが芸術でありたい」と述べられています。

芸術教育とは、特別に絵やヴァイオリンを習わすことだけではないのです。生活のあらゆる面に芸術があるのです。美的なセンスが日常生活に浸透し、活きていることが必要なのです。

母のための教育学 (著者:小原國芳)

その具体例として、「母のための教育学(小原國芳)」では下記のものをあげられています。

  • 年中行事
  • 服装
  • 食事
  • 住宅
  • 娯楽
  • 音楽
  • 美術
  • 学校劇

詳しい内容についてここでは紹介しきれないのですが、興味のある方は是非本書を読んでみてください!

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立派な芸術の極致はホントに立派な道徳だと思います。

母のための教育学 (著者:小原國芳)

先生は「芸術は技巧よりも人、表現技術よりも心」だと述べられています。

そして、そこに鑑賞教育の必要性を説いています。「名曲、名文、名作、名画をたくさん見て、聞いて、味わって、深い深い自己を作り上げてほしい」と。

4. 宗教教育(聖)

先生は、真(学問)・善(道徳)・美(芸術)を突き詰めていけば聖(宗教)に行き着くと考えていました。

学問でも道徳でも芸術でも一々突きつめて行けば、いずれも超世界的な、超感覚的な神秘境に触れ、それら一切の価値が宗教的形式を取り得る

全人教育論 (著者:小原國芳)

先生は宗教教育(聖)を重要視していました。ご自身はクリスチャンでしたが、著書では特定の宗教を薦めてはいません。

著書を読んでいても、先生はキリスト教しかしらないクリスチャンではなく、あらゆる宗教、宗派、それらを信仰する人々や書籍と偏見なく関わってきたことが感じられます。

5. 健康教育(健)

私の教育では学問教育も道徳教育も芸術教育も落度なく苦心したいのです。しかも、生きねばならぬ以上、人間生活の手段として健康の教育も経済の教育も当然必要とします。

全人教育論 (著者:小原國芳)

体育に関しては、勝敗にこだわったり、興行化することには反対の立場をとっています。競技本位の、勝負本位の今のオリンピックにも賛成できないと述べられています。

あくまでも、体育の目的は、強靭なる体力、長い生命、調和せる身体、そして巧緻性だと考えられていました。

6. 生活の教育、富の教育(富)

日本教育の恐しい欠陥は富のための富、儲けんがための教育、物欲の奴隷たる惨状です。

全人教育論 (著者:小原國芳)

上記のように述べられているように、6つめの価値「富」は、いかに儲けるかというような類いの話ではありません。

「富の消費の仕方、富のマコトの意味を教えること」がここでの課題であるとしています。

本記事で紹介したおすすめ本

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