子どもにとって、喜怒哀楽の「喜」「楽」だけではなく「怒」「哀」の感情を親の前で出せるということは、とても大事なことだそうです。
この本は、「子どもが泣くこと」にネガティブなイメージがある方、特に、次の項目に当てはまるような方には、是非読んでほしいです。
- 「そんなことでいちいち泣かないで!」と日常的に子どもを叱ってしまう方
- 子どもが泣き止むまで放っておく方
- 子どもに泣かれるのが怖くて、泣かせないように先へ先へと手を打ってしまうという方
- 第1章 感情はどのようにして育つのか?
- 第2章 子どもの「心の問題」はどのようにして生まれるのか?
- 第3章 学校でみられる子どもたちの危機の姿
- 第4章 いまから親にできること
- 第5章 大人の義務と責任
第1・2・4章は著者と親ごさん、第3章は著者と小学校の先生がお話しているという設定で創作されています。
その内容は、著者の大河原美以さんが臨床のご経験が豊富にあるだけあって、とてもリアルなものとなっています。
また、専門的な内容も、素人にも分かりやすく噛み砕いて解説して下さっています。なので、素人だけれども専門的な詳しい内容を求めている、という方にもおすすめです。
問題が表面化するまで
感情が上手く育っていないと、どのような問題として表面化してしまうのでしょうか。
我が子がクラスで飼っていた金魚を全部殺してしまった、いじめのボスになっている、早すぎる性的関係にはまってしまった、不登校、リストカット、、、4章では、このような苦しみを乗り越えた親ごさんとの対話形式で話が進められます。
親ごさんに、問題が表面化するまでの子どもの様子を聞くと、特に目立った問題もなく、家では優しくおとなしい従順で育てやすい子であったり、明るく家族の中のムードメーカーであったりするのです。
また、親側も、我が子が可愛くて仕方がない、というような育て方をしてきているのです。
幼い子どもたちの感情の発達は、確かに危機的な状況にあると言えます。
そしてその危機は、残念なことに、決して他人事ではなくて、一生懸命よい子に育てたいと思って、ごくふつうに子育てをしているそういう親子関係の中にも起こっているのです。
ちゃんと泣ける子に育てよう<親には子どもの感情を育てる義務がある>
では、どこにも問題がなかったかというと、思い返してみたときにはじめて、これまで見過ごしてしまった子どもからのSOSのサインや、親自身の心の中の問題など、様々な問題があったことに気付くのです。
ここで出てくる親子達は、これらの問題と向き合い、苦しみを乗り越えていきます。
著者は、このように子どもが犠牲になる前に、なんとかできないだろうかという思いでこの本を執筆したそうです。
私がお伝えしたいことは、第4章に登場する親ごさんたちの力、子どもと向き合い、子どもの苦しみも自分の苦しみもないことにしないで自己を変革していくことができる力の素晴らしさです。
その力は、わが子を愛している多くの親たちが潜在的にもっている力だと思っています。
しかしながら、現状においては、その力は残念ながら、子どもが大きな苦しみを抱えてしまってからはじめて発見されることがほとんどなのです。
だから、その力を子どもが犠牲になる前に発見できればいいなと、そういう思いで本書を書きました。
ちゃんと泣ける子に育てよう<親には子どもの感情を育てる義務がある>
私たち親は、どのように子育てしていけばよいのか?
ごくふつうに子育てをしていても、子どもの感情が危機的な状況に陥ってしまう可能性があると聞くと、途端に自分の子育てが不安になります。私たち親は、子どもをどう育てれば良いのでしょうか。
著者は、私たち親世代ががんじがらめになっている「よい子に育てなくちゃ」の常識から自由になる必要があると言います。
そのため、この本では、「よい子ってどんな子?」「がまんづよい子ってどんな子?」「挫折に強い子、たくましい子ってどんな子?」というところから考えていきます。
親がもつ子どもへのイメージは、直接子どもへの態度に表れるからです。
そして、最終的に著者が言いたいことは、「子どもがぐずって泣いているときには、そのネガティブな感情を言葉にしてあげて、抱きしめることが大事」ということです。
この本は、それがどうしてそれほど大事なのかということも、とてもわかりやすく解説されています。専門的な内容を素人にもわかりやすく噛み砕いて解説してくれているので、気負うことなく読めますよ!
この本の著者はどんな人?
この本の著者は、臨床心理士であり、元東京学芸大学教育心理学講座教授の大河原美以さんです。現在は、『大河原美以心理療法研究室』という相談室を開設して、親子の相談や教師の研修なども行っているようです。
おわりに・・・
現在2歳の我が娘は、「そんなことで泣かなくても!」と大人が思うようなことで泣きじゃくることがあります。愛する可愛い我が子が負の感情と戦い泣く姿を見るのは、親として辛いものです。ですが、その一瞬、一瞬に、親として最大の仕事がある、ということをこの本を読んで気付かされました。
おやつでつる、気を紛れさせる、これで泣き止むこともあるかもしれません。でも、笑顔になったところで、それは、親自身が我が子の辛い顔を見ることから解放されて、親自身が楽になっただけなのかもしれません。
子どもの感情は、1回の出来事で育つものではなく、また、1日で育つものでもないと思います。だからこそ、一瞬、一瞬を子どもの感情に向き合っていきたい。
私にとってこの本は、そう考えさせられた1冊でした。